健康保険とは

健康保険は、病気やけが、またはそれによる休業、出産や死亡といった事態に備える公的な医療保険制度です。

POINT
  • サラリーマン等、民間企業等に勤めている人とその家族が加入する医療保険制度です。
  • 健康保険は被保険者と事業主が保険料を負担しあって運用されています。

不測の事態に備える「健康保険」

健康保険の目的

私たちが生活をしていくうえで、最も心配なことのひとつは自分や家族の誰かが病気になったり、ケガをした時の治療費や生活費の問題です。
こういう不時の出費に対する心配は、病気やケガのときだけでなく、出産や死亡の場合も同じです。
健康保険は、このような場合に備えて、働いている人たちが普段から収入に応じて保険料を出し合い、これに事業主も負担して病気・けが・出産・死亡などのときに必要な医療や現金を支給して、お互いに生活上の不安を少しでもなくしていこうという目的から生まれた制度です。

日本の医療保険

わが国は国民皆保険制で、国民のだれもが必ず次のどれかの医療保険に加入しなければならないことになっています。

被用者保険
職場で加入する医療保険
(1)健康保険組合(組合管掌)
(2)協会けんぽ
(3)共済組合(国家公務員・地方公務員)
(4)共済制度(私学教職員)
(5)船員保険
地域保険
地域住民が加入する医療保険
国民健康保険(農・漁業・自営業・自由業)

医療保険には主に次の2つに大別されています。
A)被用者を対象とした被用者保険
B)農林漁業従事者、自営業者、退職者等を対象にした地域保険(国民健康保険)

Aの被用者保険には次の2つがあります。
◇国が全国を1つの単位として行う協会けんぽ
◇企業単位や業界単位という小集団のメリットを生かした組合管掌保険
これら健康保険事業を運営している者(機関・組織)を保険者といいます。
また、協会けんぽ・組合管掌健康保険は、その事業運営となっているのが健康保険法という同じ法律に基づいています。

健康保険を運営する「健康保険組合」

健康保険組合は、健康保険に関する事業を運営する公法人です。常時700人以上の従業員がいる事業所や同種・同業で3,000人以上従業員が集まる事業所が、厚生労働大臣の認可を得て設立することができます。

健康保険組合の立場

健康保険組合は、厚生労働省の許可を受け設立された、わが国の社会保障制度の一翼を担う重要な役割を果たしている公法人です。

健康保険組合は、公法人ですので、国の目的そのものを目的とした事業を行う組織で、法律上、国と同じように特別な権限を与えられていますが、反面、組合の設立から解散に至るまで国の監督、規制を受けるという性格もあります。

健康保険組合の役割

1.保険給付

被保険者や被扶養者の病気やけが、傷病による休業、出産、死亡等に対して、医療費の負担や各種給付金を支給しています。

2.保健事業

被保険者や被扶養者の「健康づくり」をサポートするための各種事業です。
健康情報の提供、病気の予防を目的とした各種健診等、様々な事業を行っています。

運営は自主的・民主的に

健康保険組合の運営は、事業主の代表と従業員の代表である同数ずつの議員によって、健康保険法に規定される範囲の中で自主的、民主的に行われています。
健康保険組合では議決機関である組合会と執行機関である理事会、そしてそれらを監査する機関として監事が置かれています。

健康保険組合の利点

自主的・民主的運営 組合の運営に従業員が選挙によって直接参加できる組織になっており、自主的・民主的な運営ができます。
行きとどいたサービス 膨大な組織と機構をかかえる協会けんぽ等にくらべてきめ細かい事業運営を行い、被保険者や被扶養者への行きとどいたサービスを行うことができます。
有利な給付 法律で定められた給付(法定給付)のほかに財政状態に応じて独自の付加給付を行うことができます。
充実した保健事業 事業主と一体になって、疾病予防などの様々な保健事業を積極的に行い、被保険者や被扶養者の健康づくりに役立つことができます。
弾力性のある保険料率 保険料率を30/1000~120/1000の範囲内で自主的に決めることができ、また、保険料の負担割合も自主的に決めることが認められています。

健康保険組合の組織

組合会 組合会は、国でいえば国会のような最高の議決機関で、「何をどのように行うか」を決めるところです。
規約、保険料、事業計画、予算、決算等、重要事項を決めます。
組合会は、事業主が選んだ選定議員と被保険者が選挙で選んだ同数の互選議員で構成されています。
理事会 理事会は、国でいえば政府のようなもので、組合会で決められたことを執行する機関です。
理事会は、選定議員と互選議員の中から選ばれた、それぞれ同数の理事で構成されています。
理事長 選定議員から出た理事の中から、理事長1名を選びます。
理事長は組合運営の最高責任者で、組合を代表します。
常務理事 理事会の同意を得て、理事長が理事のうちから常務理事を指名します。
常務理事は理事長を補佐し、日常の事業運営に必要な事項の処理にあたります。
監事 監事は2名で、選定および互選議員の中から各1名を選出し、業務の執行や財産の状況について監査します。

健康保険組合の財政

健康保険組合の会計年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までで、その年の支出はその年の収入でまかなう単年度経理になっています。

収入の大部分は、みなさんと事業主が負担する保険料で、そのほかに、多少ですが事務費の国庫補助、雑収入等があります。

支出のうち一番多いものは、みなさんが医師にかかったときの医療費やいろいろな手当金等の保険給付費です。そのほかに、高齢者の医療を支えるための支援金、納付金や保健事業費、事務費等がありますが、保健事業は健康保険組合の大きな長所ですので、積極的に行っています。

決算の結果、決算残金が生じたときは、今後の給付費支出に備え一定の金額を法定準備金として積み立てることが義務づけられており、残りは別途積立金とするか、翌年度に繰り越すことができます。

健保組合のしくみ図解